ミステリーとしてはヌルいし、ラブ・ストーリーとしてもテンプレの域を出ず。
裁判自体、どこから見ても有罪にはできないものなので、ちっともハラハラしない。
にもかかわらず、この作品が得がたい魅力を放っているのは、ひとえに主人公のキャラ設定と、おっさんイチコロなルックスによるところが大きい。
手口をいちいち説明せず、貝殻のネックレスだけで表現したエンディングも巧い(どんでん返しというほどの意外性はなく、必然的な展開だが)。
説明がないことにモヤモヤする向きも多いかもしれないが、検察が主張する「夜中のバスで往復しました」なんて土曜ワイド劇場みたいなトリックではなく、中盤の物見台のシーンで、ズレていた底板を元に戻して踏み固める仕草と、ホタルの光のエピソード(求愛と見せかけて補食のために光を出す)から、十分連想はできる。