ちろる

ビルド・ア・ガールのちろるのレビュー・感想・評価

ビルド・ア・ガール(2019年製作の映画)
3.7
いけてない毎日
私は特別なのに何も起こらない
明日、明日こそは何か違うそう思って生きてきた。

想像力豊かで文才に恵まれているのに、学校では才能を認められることもなく、悶々とした日々を送っていたジョアンナ。
ある時、兄の勧めで音楽情報誌「D&ME」のライターに応募し、一人でロンドンに出て行ったジョアンナは仕事を得ることになり日々は少しずつ色づいていく。

こういった拗らせ女子を描く作品には珍しいくらいスピーディーにヒロインはみるみるうちに見た目も言動も変わり、飛躍していく。
しかし、ものがたりはこれから・・・
かなり有名な人とも会えるようになり、ちょっと意識高い系女子になったジョアンナは、ライターとして次々とアーチストを毒舌で酷評し、とうとう「アーセホール・オブ・ザ・イヤー」の金賞を受賞して時の人となってしまう。

つまり、かなり調子こいていくわけである。

この頂点が本当にジョアンナが求めていた自分なのか?
そんなはずはない。
自分が一番よくわかっている。

自分を傷つけないで
世間に傷付けられるから・・・

思春期はこうやって暴走して、しすぎて、周りの大事な人も、そして時には自分自身も傷つけてしまう。
そうやって何もかもが崩壊したら、もう全部壊してからまた作り上げるしかないのだ。
次は丁寧に、丁寧に。自分を敬いながら、そして大切な人を尊敬する気持ちを忘れないで。

もちろん全てを失ったジョアンナもまた、心を入れ替え、酷評したアーティスト一人一人に詫びの電話を入れ、想い人であるロックスターのジョン・カイトにも本当の気持ちを打ち明ける。
そして、これまでの仕事を辞め、本当にやりたかったジャンルに目を向けて再び歩き始めるのである。

正直、この調子こいていたジョアンナは、観ていて共感できなかったし、あまりの暴走ぶりに置いてきぼりな気持ちにさえなったのだが、全て壊れたところからの再生までの行動力にはめを見張るものがある。
あんまり好きじゃなかったこのヒロインを尊敬したくなるほどに印象が変わってしまうのである。
そういう意味では感情が色々振り回された、お話。
いやー激しくも楽しませてもらえた。

ちなみにこの、主役を演じたビーニー・フェルドスタインは「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」でも同じくガリ勉系拗らせ女子を演じている。
こういうインテリ風味の拗らせ女子を演じさせたら右に出る者がいない、女優さん。
コミカルからシリアスまで・・・
これからも目が離せないです。
ちろる

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