ミシンそば

TITANE/チタンのミシンそばのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.2
観てるうちに理解できるようになるかなあと思ったが、この映画に関しては無理でした。
難解ではないにせよ、理解をそもそも拒む、咀嚼がし辛い喉への引っ掛かりが凄まじい。
意味不明なあらすじが本当にそのまま襲い掛かってくるので、そりゃそうなるわい。

だが、難解ではない。それは自分にも分かる。
痛いシーン、気持ち悪いシーン、奇を衒った「人をレイプする車」っていうメインテーマで覆い隠しているが、「自分」を理解してもらえない苦痛、「分かっていても分かりたくない」妄執、そして共依存がこの映画からは見え隠れしていた。
D・クローネンバーグの「クラッシュ」は未履修だが、彼への影響をデュクルノー自身が語っているだけあって、この映画を観た後に「クラッシュ」を観たらハッとする瞬間は恐らくあるだろう。

長編映画初主演のアガト・ルセルは、ベテランのヴァンサン・ランドンを向こうに回してよく演っていたと、疑いようもなく思える体当たり振り。
役柄的には十分ヤバイ奴のアレクシア(ルセル)が、明確に彼女よりヤバイ奴なマッチョ親父のヴァンサン(ランドン)に事実上捕らえられている感じにはなったが。

何にせよ10人中数人は明確に拒絶するようなパルムドール作品らしい映画ではあった。