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TITANE/チタンのbutasuのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.0
これは凄い。とんでもない映画。圧倒的なビジュアルの迫力と気持ち悪さ。終始生理的な嫌悪感を感じるが、間違いなくそれを意図して作られている。

車と性交して子を妊娠する、というともすればファンタジーにもなりそうな展開を、非常に生々しくグロテスクに描く。死んだ息子として得体のしれない主人公を偏執的に愛する男と、その愛に執着する主人公の関係性もやはりグロテスクで狂っており、しかしながら純粋で美しい。とはいえかなり大きくなってきている腹を苦しそうにテープで強引に抑え込み、丸坊主にし鼻の骨を折って男装する主人公の見た目はかなりエグい(腹が出てくるに従って黒いオイルが垂れたり皮膚が裂け隙間から金属表面がのぞいたり、体中に異変が生じるようになっていくため、どんどんキツくなっていく)。あえて"鉄"ではなく"チタン"なのも現代的で、ジェンダーだとか多様性だとか、そうした全てを包括した上で放り投げてみせた圧巻の作品。

正直に言えば「わけがわからなくて気持ち悪い」映画なのだが、そう切り捨ててしまいたくない気持ちで満たされる。何故なら自分には理解できない世界であっても、そこに確かに愛があることを見せられてしまったから。この感情の揺さぶられ方が、自分とは違うものに対する本質であり、それこそが"多様性"の理解に間違いなく繋がるのであろう。もう二度と観たくないが、それで良いのだと思うし、この映画を拒否する自分をも許容してくれている作品だとすら感じる。便宜上つけているが、☆評価に何の意味もない。評価不能。受け入れることはできないが、理解はしたい、傑作で怪作。
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