第二次世界大戦中のポーランド(正確には自由都市ダンツィヒ)を舞台に、3歳で成長が止めた少年が出会う、戦争だったりセックスだったりを描く。
主人公のオスカルは、大人の醜さを知り、大人になりたくないがために「自分の意志で」成長を止め、さらにその際叫ぶとガラスを割る能力を手に入れる。そしてタイトルにある通り、少年のままの姿を維持する彼はブリキの太鼓を常に携帯し、度々それを打ち鳴らす。が、個人的にはこの設定は、少なくとも物語を盛り上げるうえでの効果はあまり発揮していないと思われる。周りは意外にも少年が成長しないことに関して騒ぐことは少ないし、彼は普通の少年として扱われることが多い。肝心のブリキの太鼓も前半はそれなりにキーアイテム感はあったが、後半に関してはほぼ空気に近い。これらの要素は、むしろなんらかの比喩として出されていると考えるべきか。
警察から逃れるを放火犯をスカートに匿ってる間にスカートの中で事を及ぶ(ごめんなさい。初見で事を及んでることに気づきませんでした)など、過激な性描写が散見される。特に粉末状のシャーベットの素を臍に入れて吸うなどのマリアとの情事シーンは、「猥褻」として発禁されたらしい。そうしたセックスのシーンがある一方で、ナチスが台頭しナチズムに染まっていく人たちや、それの犠牲になる人たちの様子も描かれる。この辺りは普通に「戦争モノ」という感じ。
「狂った映画」というような扱いを受けることが多いイメージの本作だが、個人的にはそれほど狂っているという印象はなかった。確かに牛の頭からウナギが出るシーンの気持ち悪さは強烈だし、妻、夫、妻の愛人という家族構成は意味不明だが、ストーリーの体裁は普通に取れているし、「訳わからん!」とはならない。だが、「果たしてこれはどういう感想を持てばいいのか?」という漠然としたもやもやが、個人的には残った。芸術系の映画にはありがちだけど。ちなみにこれには原作があるので、そっちを読んだら色々分かるのかも。