しろくま兄サキス

あのこは貴族のしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.5
【儂ならうなぎ食うね】
 ジェイムズ・ティプトリー・Jr.というSF作家に「男たちの知らない女」って短編があってですね、それ思い出しました。飛行機が不時着して遭難した一行の前に現れたのは謎の異星人。ところが一行にいた2人の女はその異星人に、ここじゃない場所に(例え見知らぬ惑星であっても)UFOで連れ去ってほしいと頼む。去ってゆくUFOを男たちがぽかーんと眺める…というような味わいの話(いや違うし)。
 いわゆる"貴族"と庶民の視点を行き来しつつ、上流階級のしきたりやアフタヌーンティーが¥4200という金銭感覚にほほうと興味を惹かれるも特にこれといった事件は起きない。ただ粛々とそれぞれの人生が過ぎてゆく。あんまりなにも起こらないので、「あー、実はミキティ妊娠してるとか(してない)」「あー自転車2ケツしてトラックにはねられるとか(はねられない)」「あー起業が失敗して窮地に陥るとか(陥らない)」などと韓流ドラマ脳が発動。だからと言って決してつまらないわけじゃなくて、それぞれの立場と場所での会話や演技は見どころがある。
 繰り返し現れる自転車女子2人乗りのモチーフは、力を合わせて前に進むシスターフッドを表現しているのね。一方で男どもはただ人を見下したり調子こいたり蚊帳の外に置いたり全く役立たず極まりねぇな!女は女同士、UFOでどっか行こうや。