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旅立つ息子へのkouのレビュー・感想・評価

旅立つ息子へ(2020年製作の映画)
4.0
例えばそれは障害のある子供に限った話ではなく、子供の感情を、能力を、成長を全て理解することはとても難しい。子供は成長していくが、そのスピードは時に早く時にゆっくりだ。親の知らないことができたり、できなかったりする。

障害のある子供となると余計だ。定型にハマらなければ情報もなく、周りの理解も薄い。どんどん孤立してしまう。せめて自立して、親から離れて過ごすことができれば、と思うが、それのなんてハードルの高いことか。今作で自閉症スペクトラムを持つウリは、見ている側もハラハラさせる。

体は大人だが、カタツムリが怖くて進めなかったり、自動ドアに挟まれるのでは無いかと進めない。他人との関わり方がなかなか掴めない。父親と息子は2人旅に出るが、その先では困難が待ち受ける。

ただその中で、ウリの楽しんでいる姿を何度か見る。奔放に、心から。映画のラスト付近、2度大きく心を揺さぶられる部分があった。一つはある映画を常に見ていたウリがとったある行動。そこで自分は、ウリにはやはり父親との生活が一番だと思った。

しかしながら、今作はラストでまた別の視点を提示する。驚くべきその成長は、親が知らないだけで子供はすでにできていたことなのだ。心配していたことも、彼なりに、彼なりの方法で乗り切ることができる。工夫によって生きていくことができるのだ。ゆっくり、だが確実に、心配だが確かに。その姿が大きな感動を呼ぶ。レビューを見ていると批判的な声が多く見られて、個人的にはとても意外だったのだが、エモーショナルで素晴らしい映画だと思う。
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