九月

アナザーラウンドの九月のレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.7
主人公が抱えている不安や、飲酒によってもたらされる高揚感、不意にやってくる喪失感…等々を一緒に味わい、働くのも生きるのも大変だと改めて思わせられる。
マーティンと同じように気分の浮き沈みを繰り返したからこそ、ラストシーンにこれでもかというくらいカタルシスを感じた。

普段お酒をほとんど飲まない私は、彼らの飲みっぷりを見てるだけで頭が痛くなりそうだったけれど、最後の解放感はしっかり味わった。
こちらまで酔っている感覚になるようなカメラワークやピントのぼかし方が面白い。

「血中アルコール濃度を0.05%に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論はある意味では実証され、実験は成功だったのかもしれない。
でも、程よい血中アルコール濃度に加えて、久しぶりに何かひとつのことに夢中になり、しかもそれがひとりではなく志を同じくする仲間との団結があったからこそだったのかなと思う。

ラストシーンが好きすぎるものの、後悔や反省はしても結局同じことを繰り返しているだけで、あの場面には危うい要素が揃っていたけど大丈夫だったのかな…と彼の安否が気になったりもする。
良し悪しどちらともとれるラスト、と捉えてみてもやっぱり好きな終わり方だったことに変わりはない。

お酒のみならず、何かのおかげで人生が格段に良くなったりうまくいくようになったりするかもしれないっていっても、結局は自分次第でしかない。でもみんなそうやって、何かに頼ったりしながら生きているのかと思うと心強いというか、少し気持ちが軽くなった気がした。
九月

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