ピロシキ

FLEE フリーのピロシキのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.8
難民、アニメ、ドキュメンタリー。主人公は、身元を隠し「家族は全員亡くなった」と嘘をついてまで、アフガニスタンからデンマークへ逃れた実在の匿名男性。顔出しをしないために作られた、カクカクした動きの独特なアニメーションと、実写からそのまま取られたっぽい生々しい音声との不思議なバランスに、しばし戸惑う。目の前で繰り広げられる悲惨な物語は、すべて完全なるノンフィクション。とにかく日々生きていかなければ。名前を、ルーツを、性的指向を、誰にも打ち明けられなかったとしても……

真実を知った兄貴が、ゲイクラブの前で弟の手にカネ握らせて送り出したエピソードが、印象的。家族の理解があるって尊いね。ここにいてもいいのだ、という心理的な安らぎは誰にとっても重要で、入店したあと「ずっと店から出なかったww」と笑う主人公にとって、ある意味この場所も「故郷」とよべるのかもしれない。

アミンと名付けられた主人公が自らの人生を顧みたのち、これからはもう逃げも隠れもしない、という意志を強くするラストシーンが美しい。事実は小説より奇なり、なんて呑気なこと言ってられないけどね……。
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