Jun潤

FLEE フリーのJun潤のレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.4
2022.06.18

Filmarksで見つけた作品。
アニメーションということでとりあえずClipしていましたが、まさかまさかのドキュメンタリー。
2日連続でノンフィクションですがこれまた違う見せ方をしていそうで期待値を高めていきます。

アフガニスタンで生まれ育ち、同性のパートナーとの結婚を控えるアミン。
彼が友人である映画監督に語り始めるのは、難民として国外逃亡した過去、同性愛という誰にも話せない自分のことだった。
内にも外にも全てを曝け出せない男の告白が始まる。

いやはや、アニメーション、素晴らしい。
密着していなくても、事件が起きた後でも、映像が残っていなくても、当事者の証言から新たに映像を作り出し、ドキュメンタリーを成立させることができるアニメーションというジャンルが持つ可能性をビンビンに感じられる作品。

そして内容の方はと言うと、難民という不安定な時流に翻弄されるマクロ的なものだけでなく、同性愛という限りなくパーソナルな部分に近いミクロ的なものまで内包している、作品としては豪華版欲張りセット。
しかしドキュメンタリーであることを思い返すと、自身の生まれた環境や性対象が少し違うだけでこうも悲劇的なものになってしまうのかと、自分の今の環境も刹那的ではないのかと思わせるには十分すぎるほど濃厚なメッセージ性。

難民も同性愛も今の僕からは遠い世界のように見えてしまいますが、過去の事情も恋人のことも、パートナーや家族にさえ自分の全てを曝け出すことができないというのがどれほど辛いことなのかは、想像に難くありません。

「FREE(自由)」ではなく「FLEE(逃亡)」。
祖国からも、自分が好きになる対象からも逃げ続けていたけど、考えることをやめず、逃げて逃げて逃げ続けた先には、「故郷」という本当の「FREE」が待っていることもあるのかもしれない。
Jun潤

Jun潤