アフガニスタン難民のある男の、祖国からの逃避行を描いた実話をアニメーションで描いた作品。その壮絶な経験や自分の素性を隠し嘘をつき続けなければならなかった生き方を描くとともに、彼が祖国では強い差別を受けがちな同性愛者であることから、ただの逃避行劇に終わらず、彼の人生そのものの回顧録として話に厚みが増し、非常に胸の詰まる苦しい話ではあるが、終始その話の展開に惹きつけられ続けた。
実話ベース、アニメ描写、政治的な背景により自身と家族に起きた悲惨な過去を回顧する、という組み合わせでいうと、国も設定も違うものの、北朝鮮での収容所生活とそこからの逃亡を描く「トゥルー・ノース」を観ている時と近い感覚を持った。
ニュースで何度も見ていた「アフガニスタン難民」という言葉。しかし、その対応における国際会議の様子や各国の判断やは映し出されるものの、当事者の経験談を聞くことは意外となかったことに、本作を観て改めて気づかされた。
その意味でも、本作はまさに“当事者”の生の声から実態を知ることができ、今後、関連のニュースを見る際に、自分自身の捉え方や意識が大きく変わるほど、インパクトのある映画であり、悲しい現実ではあるが、私のように本作をきっかけにこの問題への意識が高まり関心を強く持った人間が多くいるであろうことを考えると、この作品が世に送り出されたことの意義は相当に大きい。