はる

スパイの妻のはるのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
4.5
お見事!!
我が家は全く8Kなんて観れる環境にないので、NHKのBS8Kでの放送は残念ながら観れませんでしたが、ようやく劇場でも公開され鑑賞する事が出来ました。監督が黒沢清、脚本には濱口竜介が入り、音楽を長岡亮介が担当するという魔融合のような制作陣に蒼井優、高橋一生、そして何かとお騒がせの東出昌大という申し分のない魅力的なキャスティング。このメンツで太平洋戦争前夜を舞台としたラブサスペンスを描くというのだからコレが面白くないワケがない!
個人的に黒沢清という監督は世界でも十分に通用する日本映画を代表する現役の作り手だと思っているのですが、本作でさらにネクストレベルに到達したんじゃないかなという印象を受けました。こうも撮影、脚本、演技あらゆる要素が完璧で美しい映画を観ていると恍惚としてしまいます。黒沢清ファンは至るところに光る黒沢エッセンスを楽しめますし、黒沢清ビギナーにもかなり取っ付き易い作品でもあると思います。黒沢清の作品は終盤に向かっていくにつれ日常が歪み壊れていくといったものが多いですが、本作は日本が戦争に向かっていく恐怖と、お互いを信用しきれない夫婦という2つの軸の変化を堪能することができます。特に脚本に濱口竜介が入っていることもあり、描かれる男も女も一筋縄ではいかず、最後の最後まで油断ならないスリリングさが本当に魅力的です。尺の長いカットや役者の顔を真正面から映すカットなど、役者の芝居を信用しているからこそ出来る表現。蒼井優を筆頭に主演3人の演技は素晴らしく、一挙手一投足まで見逃せません。東出くんは一部では棒演技などと言われる事もありますが、異物のようなキャラクターを演じるとよく映えますね。
良い映画が正当に世界で評価されるというのは嬉しいことです。監督の今後の益々の活躍を楽しみにしています。
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