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トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そしてのpariraのレビュー・感想・評価

4.5
これは教材になる一本だと思う。
是非時間を取ってじっくり観て欲しい。その価値がある。
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現在ハリウッドで活躍するトランスジェンダーの俳優、映画制作者らが、ハリウッドにおけるトランスジェンダーの歴史と境遇を、自身への影響と社会情勢を絡めて語っていく。
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つい最近観てがっつりハマった「オレンジイズニューブラック」ソフィア役の俳優さんが出ていたので視聴。

もともと私はLGBTQコミュニティの文化に興味があったし、多少は関連作品も観てきたので、それなりに知識も理解もある方だと思っていた。が、甘かった。
LGBTQの存在を知るずっとずっと前から彼ら/彼女らは私の目の前に、テレビの中に、スクリーンにちゃんと居たのに気付いてすらいなかったし、彼ら/彼女らの描かれ方に1ミリの疑問を持ったこともなかった。

本編は複数の当事者達のインタビューを軸に、ナレーションはなく新旧様々な映像作品の映像が随所に差し込まれている。
びっくりするほど有名な作品や昔の作品に、ほんの少し考えてみれば分かるだろうという様なぞっとする方法で当たり前のようにトランス役が描かれてきたことが分かる。

痛ましい歴史は過去のものではなく、今現在彼ら/彼女らが直面する現実問題であることを、自身の経験を身を切り血を流しながら共有することで、私たちに知識を与えて気付かせてくれている。

彼ら/彼女らは自分の心を守るよりも他人の心を守ることを強いられてきた。「トランスだから」と括られて、誰も当人たちの本質に目を向けようとしてこなかった。

シスジェンダーの方がトランスジェンダーの役を演じる時(本作では全否定はされてない。因みに私自身はこのパターンも、逆にトランスジェンダーの方がシスジェンダー役を演じるパターンも、役に合っているのなら良いという立場でしたし、そこは議論の余地がある様に思う)、無神経に転換過程について触れられる時、トランスジェンダーの役が殺される時、笑われる時、嫌悪の対象として描かれる時等、誰も気にしないと思っていたそれらの瞬間に、誰かの心を取り返しが付かないほど抉っていたことに皆が気付かなければならない。

「人は進化できる」という言葉に希望が持てると同時に、人間として私自身も救われた。まだより良い人間になる努力をして良いのだと思えた。

※日本語は世界でも美しい言葉の一つだと信じているが、「彼ら」または「彼女ら」という言葉の不自由さにこのレビューを書いていて初めて気付いた。嬉しい気付き。英語みたいにみんなに優しい新語が何かできるといいね。
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