原作既読。TVシリーズも全話視聴済。
『シドニア』の魅力は、様々なSF設定や各種ガジェットの面白さとハードな物語展開の合間に挟み込まれる日常ラブコメがバランス良く配分されているところで、TVシリーズもその原作の美点を忠実に再現していた。
だが、今作では谷風とつむぎのラブストーリーの比重が大きくなり過ぎてバランスが良くない。
決戦前の束の間の休日にふたりが愛を育むシーンは好きだが、終盤の激戦の最中にふたりの世界に入って延々と愁嘆場を演じるのは、よくある駄目な邦画のパターンでクライマックスの緊迫感を削いでしまっていた。
あとSF的視点からすると、遺伝子操作やクローン培養による戦士育成、人体光合成まで行いながらもあくまで個体としての人間を維持しての人類存続に拘る小林艦長より、エナと融合しガウナと共存する道を探る科学者落合の考えの方が正しく思えるので、ラストの勝利にもあまり爽快感は無かった。
