明石です

樹海村の明石ですのレビュー・感想・評価

樹海村(2021年製作の映画)
3.6
日本一の自殺の名所「富士の樹海」には、自殺に失敗した人々が作った村があるという都市伝説があり、それを信じた若者たちが、樹海に入り行方不明になっていた。そこそこには怪談好きを自認する私でも一度も聞いたことない「都市伝説」なので、作中作的につくられた架空の話なのだとと思う。そこに、実在の有名な都市伝説「コトリバコ」を掛け合わせるという謎に斬新な試み。良くはないけど悪くもない映画でした。

過去から現在へと一直線に進むのではなく、あえて前後関係をバラバラにし、時系列を散らしてあるストーリーが良い。構成自体が謎を呼ぶ構成ですね。人間関係をストーリーに絡めるやり方も上手くて、たとえば、霊感体質の主人公には、姉の友人たちとの表の関係と、ネットで知り合った顔を知らない友人たちとの裏の関係、そして亡くなった母親にまつわる過去がある。その三つをパズルのピースのように散りばめて、少しずつ繋いでいく。最後にひとつに繋がったところで謎が明かされる、という見せ方は堂に入ったもの。前作『犬鳴村』でもそうだったけど、有名な都市伝説を題材にしつつ、そこから、本来はないはずの「ストーリー」をこしらえようとする姿勢に好感が持てる。

古き良き日本の村落を訪ねるという趣の前半部が、私にとってのこのシリーズの醍醐味かもしれない笑。好きにさえなってきた。問題はやはり終盤ですね。樹海で死に損ねた人たちがゾンビみたいに群がってきて、主人公たちを襲い出す、もはやこの監督のお決まりのやりすぎ怪奇シーン。世界観と話の構成は全然悪くないので、この「呪怨の」清水監督は、やり過ぎないことを学べばもっと観れる(恋人や友人と一緒に観に行っても残念な空気にならない)映画になると思うんだけどなあ。リアリティを度外視して良からぬ方向にひとり歩きを始めたJホラーの代表格、という私の中での評価はいまだ覆らず。一言でいえば、あれもやろうこれとやろうとし過ぎ。あれもこれもやろうとする幽霊がどれくらい現実にいるのか、この監督は、ちょっくら心霊スポットとかに行って試してみるといいと思う。

ホラー映画の中にしか存在しない幽霊を、ホラー映画だからといって出されても冷める。そういう当たり前の観客の心理についてもそろそろ知ったほうがいいと思う。恋愛映画の登場人物が、恋愛映画でしか通用しない特殊な事情で恋愛されても誰もノれないのと同じこと。そういうのあるよね!とか、自分と同じかも!と観客に思わせるために、(Jホラー以外の)映画の作り手が、どれだけ頭を使っていると思ってるんだろう。他のジャンルが腐心していることをことごとく無視し、逆に、他のジャンルでやっちゃいけないとされてることを、ホラー映画(というかJホラー)ではこうも嬉々としてやってしまう。それが観客の顰蹙を買っている要因だと、この大御所監督はいつになったら気づくのでしょうか。

シリーズ2作目とのことですが、本シリーズには、この俳優さんが出てるから最後まで観れる、という実力派俳優がちゃっかり要所に絡んでくるのも、憎めないところなのかもしれない。前作『犬鳴村』では高嶋政伸、今作は國村隼。凄まじい存在感でした。ナ·ホンジン監督の韓国ホラーでも「日本人」というあだ名の悪魔を演じていた、実はホラー映画でも活躍しているコワモテ男、さすがの貫禄、というかレベチじゃん。
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