KnightsofOdessa

アル中女の肖像のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アル中女の肖像(1979年製作の映画)
4.5
[名もなき女のベルリン酒場放浪記] 90点

大傑作。片道切符でベルリンにやって来た物言わぬ名もなき主人公。優雅なブルジョワである彼女の目的は、過去を忘れて破滅的な情熱に身を任せ、ひたすら酒を飲むこと。不自然にも人が少ない空港はそれだけでもワクワクしてしまうが、真っ赤なコートを着て颯爽と歩く主人公を様々なショットで美しく格好良く切り抜いていくので、余計に楽しい。主人公の足元(真っ白なヒール靴)が遠ざかる→イキった従業員がゴミ回収カートを暴走させてカメラ前で転ぶというシーン、ガラス越しにこちらを覗く主人公の前を突然水拭きし始めるシーンなど冒頭10分で圧倒的な満足度がある。街へ繰り出した主人公は酒場を渡り歩き、途中で出会ったホームレスの女性を仲間に引き入れて、破壊的な酒場放浪の旅に出る。そして、行く先々で遭遇する"正確な統計"社会問題""常識"と名付けられたギンガムチェックの女性三人衆が、主人公一行を取り巻く状況を解説する。社会規範や男性優位社会への反抗と破壊を謳いつつ、全身にパンを貼り付けた男が登場したり、突然カツラを被っての綱渡りや燃えるブロックに車で突っ込むスタントを始めたりなどやりたい放題という印象。ガラスに2回、鏡に2回、液体をぶちまけるシーンが印象的。そのままカメラレンズに向かってコップを投げてくるんじゃないかというほどの反抗っぷり。あと、アドルフォ・アリエッタ『炎』くらい夜闇が暗いので、終盤のスポットライトも映える。
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