Aya

ヘイターのAyaのレビュー・感想・評価

ヘイター(2020年製作の映画)
3.5
#twcn

悪のビルドゥングスロマン。
主人公がひたすら可哀想な映画。

それを顔全体で表現できててすごい。
でも傲慢な彼はこういう生き方しか出来なかったんだろうな。

タイトルはずばり「Hater」

カタカナで書くとヘイター。

HIP HOPでいう所のアンチ。

ポーランド映画。
養蜂場の田舎から出てきて大学で法学を学んでいたトメク。
しかしレポートの盗用で退学になってしまう。

スポンサーの家に食事で呼ばれた際、前から気になっていた娘ガビと対面するものの、家に盗聴器を仕掛けてすぐに去る。
自分が帰った家の中では自分を笑い者にしてしていた。

友達未満の家の又借り主の主宰のサイレント・ディスコa.k.aラ・ブームディスコで彼女と踊り明かし一時いい感じになるもガービは泥酔。

同じ夜、偶然出会った実業家から法の範囲内で「ある標的の評判を落とす」という仕事を違法ギリギリのプレゼンで勝ち取り、なんとか就職が決まり、SNSも絶好調。

そんな彼はSNS命で友達のいないいわゆる陰キャ。
自分がいじめや蔑みなど不遇な目にあったことで「いじめてもいい人間はいる」として他人を攻撃するようになる。

主人公の仏頂面は物語が進むごとにどんどん強固になっていく。
まるで「I ROBOT」の時のラミ・マレックだ。

見事勝ち取った仕事はインドから複数のアカウントを買い、インスタで相手の不利になる誹謗中傷をないことないこと拡散してゆくというまさにトメクにとっての天職。
最初の仕事は大成功。
ターゲットは泣きながら謝罪し、仕事を引退した。

精神的にヘコんでやけになっていた愛しいガビにアプローチするも除籍になったことがバレ、さらに彼女とドラッグをやっていたことが親にもバレて完全に拒絶されたことを知ったトメクは一家への復讐に本腰を入れる。

戦略は彼らの支援する若手政治家のルドニツキー。
彼は市長選へ立候補している。
しかし今回は事が事だ。
1人の政治家を失態させる。
リスクは大きく、仕事の成功も自身にとって大きなものになるだろう。

普通に、好きでもない相手が自分の部屋に入って薔薇を撒き散らして行ったら気持ち悪いです。

ちなみに人が減り続けている日本こそ難民Come on!!の姿勢ですぅ!!
でも仕事はないですぅ!!

意気揚々と「仕事」を続けながらも盗聴は欠かさない。
その仕事は大胆に、スパイの様相を呈する。
潜入捜査はうまくいき、ターゲットであるルドニツキーの信頼も特殊な形で勝ち取る。

オンラインゲームのアバターでバカを釣り、多くのFacebookをハッキングし、支持者とそうでない者を争いを起こさせ、それが民主主義者とネオナチとの争いへと進化し、もう後戻りはできない。

上層部からの要求は高く、自分が評価されるため、ガビを手に入れるため、相手を徹底的に潰す為に、オンラインゲームで目をつけたバカにテロを起こさせる。

彼が今まで仕分けていた血だらけの子供たちのように、周りは血の海と化す。
しかし、それすらトメクへ幸運をもたらす。

サスペンス、スパイものとしてのハラハラ感と騙し合いが最初はうまくいかないものの、トメクのクオリティがアップするにつれ、段々、他の追随を許さない強靭なものへ変化していくので、どちらかというと、悪のビルドゥングスロマン。

これ、主人公よっぽど強運じゃね?
最強くね?

こんな精神力と憎しみの強い奴、他のぬるめの企業でも絶対やっていけるよ。

でもなんつーか、人って自分の目的とか欲が満たされたところで、自分のしてきた事で失った後ろ暗さがある限り、スッキリはしないんだ、って思った。

彼にどんな未来が訪れようと、一度でもこれほど深く人をHateしてしまい、そのために新たなHateを人に植え付け、その上にまた別の誰かがHateを積み重ねる。

この積み構造の源は自分だ、ということはきっと忘れられないだろう。
元々は弱い人だったのだから。
それを考えると、強くなったけど、幸せにはなってない。


日本語字幕:小山 美穂
Aya

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