えちぜん

ノマドランドのえちぜんのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7
フランシス・マクドーマンド(ほぼ独演)を通じて描く、現代の新しい生き方。資本主義への警鐘という点で社会派であり、アメリカの壮大な風景美は映画的。

しかし登場するノマドたちは実在の人々で役者ではなく、またストーリーに大きな盛り上がりもないので、ドキュメンタリー寄せの作風には好みは別れるだろう。ただノマドの生き方そのものが、起伏のある人生でなく悠久の大地でフラットにゆっくり生きていくものだろうから、作品のテーマにあっていると言える。

フランシス・マクドーマンドは好きな女優だが、彼女を通じて感じるノマドの世界は、圧倒的に自由でありながら、同じくらい孤独感が漂っている。もし体調を崩したら、それは死に繋がるかもしれかい。一般社会の生活はしがらみも多いが安全も保証されている。結局はどちらを選ぶか?(そしてどちらを選ぶのも人生の自由)なのだろう。

ただ、若い頃にバイクで2ヶ月ほど放浪した経験で言うと、人間って意外とモノやお金がなくても生きていけるのは知っている。モノ・カネ・社会的地位など、皆が求めるものを手に入れるほど不自由になっていくのも人生。他者との関わりは最小限に、己のみを考える生き方とは、本来の野生生物に回帰した生き方に近い。

エミール・クストリッツァの「ジプシーのとき』は、ロマの人々をロマ語で撮影していたが、それを思い出した。それが現代のIT社会でまた同じようなことをやっているとは。
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