あばばば

ノマドランドのあばばばのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
大企業の作った企業城下町に住み、企業が潰れて家を追われ地図からも消え、ノマドとなった民が今度はAmazonなどの大企業で日雇い労働をして放浪の食い扶持をつなぐの、よくできた風刺漫画みたいでめまいがした。ノマドは流浪の民、終わりなき旅と称されてたけど、「人生は続くし、等しく終わる」という点で見てみれば、別に土地を持ってる人と別にさほど変わんないようなぎがした。ただその土地というのが、市場や経済によって支えられているだけだし、事実この物語が企業の倒産という経済的な破綻から生じてる時点で示唆的だもん。そもそも大企業が潰れることで土地を追われるってめちゃくちゃ怖い。一つの企業に生活の全部委ねるなんて普通に怖くてできないけど、今のこの企業の持つ社会的な強さや権力を見るとそのへんの感覚が鈍っていくのもめちゃくちゃわかる……
ある一人の高齢者のノマドが亡くなるシーンがあるけど「人生という旅の終わりへの安心」に満ちてたのが印象深かったです。なにが幸運な生き方なのかなんて言えない。さまざまな理由で定住することができないし、人と常に一緒にいることもできない。それでも人とつながりを持つことを止められないジレンマ、さびしさ。同じノマドと数年に何度か偶然に出会う、という緩やかなコミュニティの繋ぎ方は新しく感じたが、人間の孤独さみたいなのを突きつけられてるみたいで苦しくもあった。人生の終わりをどう迎えるか、というのはノマドにも土地を持って暮らす人間にも同じように言える問題でものすごく胸に迫った。
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