人生を振り返るとき、思い浮かぶ美しい景色は何だろうか。
燃えるような夕焼けとか、窓ガラスの水滴とか、田んぼを吹き抜ける風とか、波間にきらめく満月とか、突風の波打ち際とか、子供の横顔の光の境界線とか。
その瞬間が、ある人は仕事で成し遂げた何かの光景と達成感かもしれない。ある人はあたたかい家庭の団欒かもしれない。
物質的な豊かさで幸福は語れない。
でも生きて暮らしていくには物質的な過剰さに加担しないと暮らしていけない。
生活の基盤も完全に切り離すことはできない。
そのジレンマと欺瞞のようなものが、孤独感とか独善的な印象を持ってしまう。
ただ、その根底にある生きることと心を通い合わせることへの切望はとてもよく“わかる“。
ただ“生きたい“
なるべく純度高く。
静かな時間の中にその叫びと熱が伝わるような良作だった。