あらゆる紛争の悲惨さは殺し殺される事による命の消失や財産資産の喪失にある。わけても民族紛争においては隣人や知り合い同士の憎しみや殺し合いとなることで生き残った者同士にさえも出口のない未来が残る。融和に至るには気が遠くなる時間と諦念が要るだろう。
本作はアイダが極限状況のなか、せめて家族だけでも助けようと関係各所に必死の助けを求めて奔走する。
結果はおよそ二万人のスラブレニツァの避難民の半分が虐殺の憂き目にあい、そこには彼女の夫と息子二人も含まれる。
見方によっては職権濫用によって身内の救済に狂奔した挙げ句、最悪の結果となったともみえる。しかしそれは身の安全が保証された第三者の戯れ事かもしれない。
事実を踏まえている事を考慮しなくても作品としての迫力や臨場感には言葉を無くした。そして未来は屈託なくお遊戯をする子どもたちの中にこそ残されている。