木蘭

アイダよ、何処へ?の木蘭のネタバレレビュー・内容・結末

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

 扱うテーマが重要である事と映画の出来は別に考えなければ成らないし、残酷な事象を突きつけられたショックと感動はまた別だと認識しなければ成らない・・・なぜなら、この作品はドキュメンタリーではなく劇映画だから。
 そう考えると・・・西欧諸国や米国が作った、軽薄で偽善的な旧ユーゴ内戦の映画とは、勿論一線を画すのだが・・・作品としては凡庸。残念ながら。

 ドキュメンタリー風なのか、内証的な映画なのか、『ホテル・ルワンダ』の様なサスペンスなのか・・・総てが中途半端。それは監督の力量なのか、作風と合わなかったのか、心の整理が付いていなかったのか、取り巻く社会のせいなのか・・・恐らく全部なのだろう。
 ラストの被害者や加害者(同時に加害者であり被害者でもあるのだが)が混在する現在のスレブニツァでのシーンも夢想的な描き方で、今ひとつ迫ってこないし、人が死ぬシーンを決して直接は映さないのも何処か中途半端で説得力が無い。
 ボスニア・ヘルツェコビナの人に取っては正視できないからかも知れないが・・・戦争から間もない頃に作られたユーゴスラビア映画の方が(当時のミロシェヴィッチ大統領に対する映画人のプロテストという側面があったにせよ)寓話的だとしてもグロテスクでブルータルな映画を送り出していた事を考えると・・・戦争は遠く成りにけりなんだろうな。それはこの場合、良い事なのだろう。

 とはいえ、見るべきシーンもあって・・・歴史の教師だった夫が戦争中に欠かさず付けていた日記を燃やすシーンは胸に迫ったし(歴史家の記録を燃やす行為は死にも等しいからね)、国連や政府に見捨てられて総てを現場に押しつけられたオランダ軍人たちのパニックや若い兵士が恐怖にむせび泣くシーンは見ていて辛かった。
 そこは、とても良いシーンでした。
木蘭

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