Jun潤

親愛なる同志たちへのJun潤のレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.5
2022.04.13

予告を見て気になった案件。
冷戦下のソビエトをモノクロで描くドキュメンタリー調の作品。

1962年、ソビエト、ノボチェルカッスク。
共産主義政権下で物価の上昇と賃金の低下により市民には不安と焦りと怒りが募っていた。
共産党員で市政委員を務めるリューダの娘・スヴェッカが働く機関車工場で大規模なストライキが起きる。
騒動は激化の一途を辿り、ついに軍まで派遣されることとなる。
ついに市民へ向けられる銃弾、隠蔽されようとする歴史の闇が、母娘の愛で掘り起こされる。

人が集まれば集団ができる、集団ができれば法と制度が必要になる。
法と制度があればそれを管理する人が必要になり、それが国となる。
人が国であり、人は国であるはず。
しかし人は人であり、国も人であれば間違いを犯す。
人は間違えてもやり直すことができる、ならば国もまた同じ間違いを犯さぬよう変わるべきのはず。
しかし国は、その歴史は、同じ過ちを繰り返してしまうのである。

人か国かという単純な二元論に持っていこうとする様、助けを求めても手を差し伸べない国を見かねた民と、思う通りに動かない民に困惑する国の対立構造、それらがモノクロという白と黒しかない作品の世界で描かれていました。

そしてまさに国と人との間で揺れ動くリューダ。
共産党員として国を信じるのか、娘を愛する1人の母として娘の行方を案じるのか。

一時の辛抱、ちゃんとするはず、ちゃんとしなきゃ。
そうして我慢し期待し小さくても行動してきた民を、国は何度裏切るのだろう。
もはや国は人ではなくなり、中身のない空っぽの箱を人が持ち上げてるだけなのではないか。

この時流の中、今作のような事実が闇に葬られないよう、公開まで繋いでくれた関係者にただただ感謝。
Jun潤

Jun潤