カラン

親愛なる同志たちへのカランのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
4.0
旧ソ連のノヴォチェルカッスク虐殺という1962年の事件を題材にしている。準新作が半額というのでたまたま棚で目についたのを借りてみた。

冒頭。光をふんだんに取り込んだモノクロームの撮影で、早朝、裸の中年男と女がベッドに。ワインのボトルが椅子に。女はこの男の妻ではない。女が買い物のことで強めの口調で何が言いながら、観音開きのように据えられた3面の鏡の前に座る。ストッキングを履きながら軽い口論。手前の男が身を起こして、肩越しショットで空間を作りながら、女への視線を遮る。男をよけてスクリーンを覗くと、女はまだ鏡に囚われている。精細で輝かしく幸福なモノクロームのスクリーンのなかで、画面手前の女の半身と3面の鏡像の4つに分身しており、さらに男の肩で女の表象を切り裂いているわけだが、身支度して出て行くことに忙しい女は気づいていない。。。

わくわくするよねー、格好いいでしょう?(^^) こういうの大好き!

いったい監督はどちら様?と、いったん停止。コンチャロフスキーさん。覚えがある。タルコフスキーと組んでた人だね。ローラーとかね。やったー。で、映画の出来はというと、うーむ。ちょっと薄味だねえ。(^^)

ヤスミラ・ジュバニッチさんの『アイダよ、何処へ?』(2020)的な昂った荒々しい人の群も、そんなにたくさん集められなかったんだろうね、少なく見えないようなショットにしてたけど、少ないし、ダイナミズムがちょっと。川のショットとかは凄いんだけどねー。でかいし、滔々と永遠的だし、光ってるし。

あるいはまた、パヴェウ・パブリコフスキみたいに社会主義の大きな圧力下で翻弄される個人の情欲と愛のドラマを展開したかったんだろう。母→娘の愛に、KGBの男が絡まるのだけれども、娘の描写が薄いし、母である主人公へのKGB男からの思慕は欲情のレベルを超えないんだよね。だって美人だけどきっついっていうだけだからね、この主人公のものとして描かれた性質は。

旧ソ連のフルシチョフ時代に起こった、ストライキだからね。共産党のひいた社会主義体制下で、ストライキってなんだそりゃなわけで、もうちょっとそこのあたりの顛末を丁寧に描いてくれたらよかったかもしれないが、難しいのかも。これからはもっと難しくなるかも。国境に軍隊配置して以降は、かなり強烈な検閲と管理主義だろうからね、あちらのお国は。

レンタルDVDは5.1chマルチチャンネルサラウンド。音質は普通。画質は良い。映像の風合いはパヴリコフスキには劣る。
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