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ニューオーダーのotomisanのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.9
 メキシコは「メキシコ合衆国」で議会があり大統領もいる。ならば、軍の最高指揮官は大統領であろうから軍の治安活動に大統領の声明が示されず国防大臣が表に立つのはどうした事か?これは事実上のクーデターという事か。
 こんなことになる前に相当な政情不安、民心の離反があらわれていただろうが、それでも結婚を強行しようという、どんな旨い話が背景にあったのだろう。

 もうひとつ、メキシコと言えば麻薬組織と誘拐ビジネス。今回の事変では前者は表に出てこないが誘拐屋とどんな結託があるか知れやしない。他方、武器弾薬の調達と作戦行動では軍人ほど長けた者はいないわけで、三者が手を組んで治安活動に紛れれば大金持ちの誘拐もやりたい放題濡れ手に粟の大儲けだ。
 ところで、こうした動きはクーデターの首班たちには実に困った事である。軍人が誘拐ビジネスの片棒を担いでると世界に知れれば、議会も大統領も機能不全なこの国から資金も儲け話も逃げ出す一方である。だから、関係者はどしどし殺して足のつかぬよう骨まで灰にするか、罪を着せられる相手にとことん罪を擦り付けるかするのである。
 この手はこの先ますます重宝がられて、事の起こりとなったデモや院外活動の野党勢力にも及んで、あるいはありもしない議会襲撃や大統領暗殺にまで至る国家転覆謀議のでっち上げに発展するだろう。

 こんな最中、真っ当な人たちは訳もわからぬまま誘拐被害者として、また、酷い誤解の末、誘拐主犯とみなされ誰かの都合に弄ばれて皆死に、運が良かった金持ちが新たな提携先を得て潤っていくだろう。ついでにいえば、結婚式の参列者の多くが死んで彼らの資産が暴落状態で売りに出れば、生き残った者等はそれを買い叩いて一層潤うのである。
 旧秩序の下で死に瀕した彼等だが国防大臣の新秩序のおかげで得た回生にビジネスは蛇の道の先で花咲くと異様な運命に自嘲するだろう。
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