ロックウェルアイズ

いとみちのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

いとみち(2020年製作の映画)
4.8
三味線×メイド
青森が舞台の物語。
弘前の高校に通う相馬いとは、口ベタな上コッテコテの方言で友達もあまり多くない。
そんな彼女はある日、青森市内のメイド喫茶でバイトを始める。
そこでたくさんの人に出会い、やめていた津軽三味線を再び弾き始め、次第に少しずつ成長していく。

もう、空気感が素晴らしかった。
青森に行ったことはないですが、まるで自分の実家が青森にあるかのよう。
生活感溢れる家や自然な学校の雰囲気などなど、タイトルバックまでの数分間で完全に心掴まれました。
本当にリンゴだらけなんだろうな。
青森の雄大な自然と津軽三味線の耳を打つ音。
美しい映像と音楽だけでもう萌え萌えキュン。
どのシーンも愛おしく、何気ない日常に何度も泣きそうになった。
外出自粛が叫ばれる今、それはずるいよ。

メイドという夢を与える職業とその裏にある現実的な問題。
バイト代は三味線の修理費に当てて、徐々に周りの人や物を変えていくいと。
地元では脇役だった彼女が三味線を通じて、いつのまにか主人公になっている。
声に出せなければ音にすれば良い。
三味線ライブ後の登山シーンはまさに彼女の心情でした。
親子関係や過去の母親の記憶など、彼女の中のモヤモヤが色々吹っ切れたようで、こちらも青空の如くスカッとする。
恋愛、友情、スポーツと色々な青春があるけれど、彼女は彼女のままで。こういった青春も良いではないか。

主演の駒井蓮さんがとても良かった。
素朴な顔立ちだけど、何かを引き寄せる力を持つ圧倒的ヒロイン。
津軽弁も三味線もこれのために練習したにしては上手い。
基本的にどの登場人物も愛おしくて(あのクソ客1名を除く)、人間味溢れている。
おばあちゃん役の西川洋子さん、女優さんかと思ったら本物の方でした。え、演技素人には見えない。
K大魔王は「みんな、かに」って紙を残してたから許してあげましょう?

この作品の評価を大きく分けるであろう津軽弁。
確かに聞き取れない。
でも、半分くらいはなんとなく言いたいことがわかる。
おっ、わかるようになってきたと思ったらまたわかんないみたいな。
もはや外国語の領域ですよ。
津軽三味線と一緒に津軽弁を話せるようになりたいと思ってしまった。
絶対失ってはいけない日本の宝ですね。
こういった日本が誇る文化、大切にしていかなくては。

↓以下、笑ったシーン
・おばあちゃんとルンバ
・服のサイズ「エル?エル?」「LL?」
・「カチューシャ前の方が可愛いよ、どうせ自称永遠の22歳おばさんにやられたんでしょ」
・「お、お、おおんがえりなさいませ、ご、ごすずさま!」
・「あぁ、妖精さんだぁ 待て〜」
・クソ客に対して「いってらっしゃいませ、ご主人様」
・「首もぐど‼︎」
・ワンちゃんへもお疲れ様でした
・「あ、歳計算したでしょ」
・夜中に2人とも家出
・チョモランマ
…etc 覚えている範囲で