くろまめ

犬部!のくろまめのネタバレレビュー・内容・結末

犬部!(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

試写会で見せていただきました。
まず、思ったよりかなり社会派寄りのストーリーで、決して楽しいだけの映画ではないです。もし、林遣都くんや中川大志くんが、犬と戯れている姿を見たいといった意図で見始めると、少し期待はずれかもしれません。

とにかく、ペットの殺処分問題へのメッセージがダイレクトに伝わって来るし、そのような描写も割と隠さずにあるため、目を覆いたくなる場面があります。ペットとして動物を飼う場合の、可愛いだけでは済まされない、命の重さと、その責任を誰が取るべきなのかをすごく考えさせられる映画でした。

林遣都くん演じる颯太は、熱くてまっすぐで、一匹も殺したくないという信念を、今までのルールや相手を気にせずに貫き通すタイプ。中川大志くん演じる柴崎は、冷静沈着に現状のルールを守りながら、颯太とは違う形で、動物を救おうと努力しますが、無情な現実と、自身の力不足に、心折れてしまう青年。全くタイプの違う2人が大学で出会って、お互いをリスペクトしつつ、時には対立しながら、大人になっていく姿が点描的に描かれています。
とにかく、この2人の若い俳優がすばらしくて、この真逆のキャラクターを、真面目に、繊細に、力強く演じられています。

林遣都さんはさすがの演技力で、犬を可愛がる姿は本当に愛情に溢れていて、まっすぐで嘘のない花井くんを体現されています。こんな泥臭く熱い役柄は初めて見るお姿でした。
中川大志さんは、実年齢はだいぶ若いそうですが、他の三人(林くん、大原さん、浅香くん)と同級生に見える落ち着きがあり、悩み苦しむ繊細な柴崎は、見てる方も辛く、劇場内からはすすり泣きが聞こえました。
犬が相手のお芝居なので、おそらく何回も何回も撮り直したりされたことと想像しますが、雑な演技や気持ちのキレたところは一切なく、このお二人だから完成されたリアリティを感じることができました。

もし、この映画で一点、難点を言うなら、過去と現在を行ったり来たりするので、その切り替えが、見る方の時間軸を混乱させてしまう感じはしました。(ただ、役者が上手いので、すぐに過去の話だとは気づきますが)

それを差し置いても、この夏休みに、子供に見せたい素敵な映画でした。
ちなみに、颯太のモデルとなった太田快作先生も出てられました!
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