スカポンタンバイク

ザ・フラッシュのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
5.0
これは本当に素晴らしかった。
もう最初から最後まで涙が止まらなかった。

特に「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」と同日公開は運命としか言いようがない。この2作は絶対にセットで観るべき。
話的にセットで観るべきというのもあるが、今作は映像も本当に素晴らしい。「ブラックアダム」の時にも思ったが、「一体いくらかけたんだ!?」ってくらいCGクオリティが凄まじい。単にリアルって事とも違くて、物凄く漫画的かつアクション映画としてのダイナミズムをバランスよく構成してるのが、もう凄い。フラッシュのカッコいいんだかダサいんだか微妙なラインの疾走シーンも本当に絶妙でカッコよさとダサさと漫画っぽさが同居してるという異常な事が起きてて、もうニマニマが止まらなかった。

そして、肝心な話なわけで。
スパイダーマンの方で「カノン事象」というキーワードが出てくるが、今作もキャラクターをキャラクターたらしめるカノン事象は何なのかを考察する作品になっている。スパイダーマンと違いタイムパラドックスが絡むため、語られるテーマは微妙に違ってはいるが、キャラクターにとってのイベント、描かれた人生というのがどれだけ重大なものなのか、ワイスピやバックトゥザフューチャー的な歴史修正主義がいかに罪深い事なのかを切実に描いている。不可逆なイベントは常に過去にあり、人生は常に現代にある。数多の可能性があったとしても変える事のできないイベントがある。それは、それこそが現代のフラッシュたらしめた瞬間だからだ。それを悟ったフラッシュが最後にした決断はもう、涙無しには観られない。それはヒーローだからこその特別なイベントではなく、ただの1人、普通の少年が何気なく生きる日常のワンシーンなのだ。そんな彼が未来に向けてささやかな魔法をかけるというのも、もう泣けて泣けて仕方ない。
DCヒーロー映画では間違いなくベスト。ヒーローが興味あるとか興味ないとか関係ない。普通の少年のささやかな願いの物語として、誰にでも観てほしい。予習とかいいから、できるだけ多くの人に見てほしい。