わっしょい

ベイビー・ブローカーのわっしょいのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.6
捨てることで守る(しかないこともある)。

赤子のブローカー、元捨て子、赤子を捨てた張本人、刑事等の様々な立ち位置のキャラクターが、赤ちゃんの人身売買を通して変わっていく物語。

正直、それぞれの立ち位置やストーリー展開がふわっと描かれていて、分かりにくかったように感じた。

それぞれの目的や価値観が全く異なっていたはずが、終盤になると赤ちゃん(ウソン)の健全な将来を守るという共通の目的で行動するようになっているのが面白かった。

皆の目的の移り変わりのキーになっているのが、ウソンの母親であるソヨンだった。
ソヨンが際立って母親らしいことをしたかと言うと、そうではないと思う。
では、何故皆の行動指針に影響を与えられたかと言うと、「赤ちゃんを捨てる」という行為への認識を改めさせることができたからなのかなと思った。
「赤ちゃんを捨てる」という行為の真意は「赤ちゃんを殺す」ことではなく「赤ちゃんを守る」ということ。
ソヨンを通して子を捨てる親全体への理解を深め、元捨て子や刑事はそのように認識を改めていったのだと思う。
そうしてソヨンを敵視する理由を失っていったように見えた。
そして結果的に、自然とウソンを守るというのが共通の目的になっていったのだと思う。

そんな訳で、「(ソヨンはウソンを)捨てたのではなく守ったと伝える」という買い手夫婦の言葉が、最もこの映画を表しているように感じて、印象に残った。

フローチャートで「いいえ」を選び続けた先の最後の答えとして「捨てる」があるだけで、赤ちゃんを「殺さず」に「守る」ことができる。
赤ちゃんポストの存在意義を感じることができる映画だった。
「捨てるくらいなら産むな」という意見も至極真っ当だと思うけれど、産んだ後で結果的に育てられなくなった際に、守る為に捨てるしかないこともあると学べた。


演出としては、トンネル、夜の電気を消した部屋、目を手で覆うなどの暗い所で本音が出てくるようなシーンが印象的でした。
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