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ベイビー・ブローカーのkazukiのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.2
優しい世界の優しい日常。
作中で発せられる重いテーマとの乖離に違和感を感じた。

本作の登場人物は皆優しい。
多少意見が違ったり、人を殺したり、施設から盗んだ赤子を売ったりはするが、作中で描かれる彼らは優しく、他人の視点に立って物を考える事も出来れば、自らを客観視する事も出来る。ようは「出来た大人」ばかりである。

じゃあ何故そんな人達がこんな事を?
という部分については、多少匂わされるだけで、余り焦点は置かれていない。
※例えばブローカーの2人は赤ちゃんポストという制度で良い結果にならない子供もいるんだ! という問題意識や単純な金欲しさっぽい事を言うし、女は父親が「産まなければ良かったのに」と言ったために殺したと言うが、それ以上は掘り下げられない。


一方、本作から読み取れるテーマ, というかセリフとして発せられる問題意識のようなものはいつくかあり

●赤ちゃんポストという制度事態が、赤ちゃんを捨てる事を助長している。
●何で母親が赤ちゃんを捨てたら、その母親ばかり避難して父親の事は考えないのか
●産まずに殺すのと産んで捨てるのとどっちが罪なのか? (中絶を巡る議論では, どのタイミングから人は倫理的権利を得るなるのかという問題がある。胎児の人権問題)

どれも一朝一夕に答えの見つかるものではないが、作中でこういった事を呟きこそすれ、この問題について議論したり、社会に在る不整合を示す訳でもない。

ただ優しい者同士が時間を掛けて分かり合っていく物語の中で上記のような問題を扱う意味とはなんなのか?
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