救済P

アイの歌声を聴かせての救済Pのレビュー・感想・評価

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)
4.0
『AI』というバズワードを拡大解釈した結果生まれたポンコツAI「シオン」と主人公「サトミ」を中心とした古来より受け継がれるアンドロイドものの流儀に則ったストーリーが紡がれる。

シオンの歌唱シーンは時に壮大で、時に情熱的で、時に情感をこめて、曲のジャンルに従ってその表情を変えあたかも別人かのように歌い上げる。まさしく「アイを歌う」特性を持ったAIであるところのシオンだからこそできる芸当であり、力を入れて描写されている歌唱シーンは迫力がある。

描写という点については物語の舞台があらゆるデバイスがネットワークにつながった近未来を描いているということもあり、過去の人が想像した「未来像」が、実生活に存在していてもおかしくない「リアリティ」をもった中間点に相当する技術レベルで描かれており、これまでの未来を描いたIT映画とはまた違った実感を伴うワクワクを感じる。

しかしなんといってもこの映画は『AI』であり、『愛』であり、そして『<アイ>』を物語るストーリーにこそ真価が秘められている。「AIの歌声」でもない、「愛の歌声」に留まらない、「<アイ>の歌声」を描いた本作を観終わる頃には我々も「アイの歌声を聴かせて」と求めて止まない。
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