映画というよりは、「動く現代美術」と言ったほうがぴったりくるような作品だった。
不条理な現代詩のような物語が語られるなか、写真や動画やコラージュが無雑作に流される。
映像は関係があるようにもないようにも見え、ほとんど物語の説明として成り立っていない。
延々とこの意味不明な世界が続くのだけど、意外やこれがとても楽しい。
どこか寓話的で、何かを比喩で表現しているかのように思える話も面白いし、映像のセンスもいい。
わけのわからない世界に迷い込みながらも、何が起こっているかだけはわかる、という感覚。
でも、わかるのに理解できないというモヤモヤ。
ここまでぶっ飛んでいると、なかなか普通に観ることはできないだろう。
おそらく、まったく受け付けないか、ドツボにハマるかの二択だと思う。
僕はドツボ派だったので、ものすごく面白いと感じたが、これを拒否する人も必ずいると確信する。
個人的にはキャラクターの造形がとにかく素晴らしいと感じた。
まったくのダメ人間なのにどこか上から目線の主人公のおかしさ。
怪しげな酒を勝手に客に出し、世界を語り出すバーテンの奇妙さ。
台詞から見えてくる人間性だけでも目を引くのに、そこにまたわけのわからない画がつくのかおかしくてしかたなかった。
特に、彼女のムシェットの無茶苦茶ぶりは一見の価値がある。
ここは思いきり笑わせてもらった。
シュールのひと言では片付けられない、意味不明映画。
わけのわからない映画とか好きな人にはたまらないと思う。