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らせん階段のpikaのレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
4.5
らせん階段と白い壁に映る手すりのシルエットを真上から捉えるショット、バックで流れる不穏な音楽、無声映画「接吻」の上映を見ている少女からシャンデリアにパンアップして階上で起きる殺人へと繋がる一連の流れは映画のムードを端的に説明していて素晴らしいオープニングシークエンス。
中盤、きらびやかな結婚式から「ハッ!」っと現実に戻される妄想シークエンスはさすがドイツ表現主義!たまらん!!似たようなのはあるけど一味違う。なんだろう。ドヤ感ないし、カットのタイミングかな。カメラが良いし、モノクロの雰囲気も最高!省略演出もむちゃくちゃ鮮やか。気持ちいい。

主人公ヘレンの顔演技が素晴らしい!!
声を失った少女ってところでサイレント映画的な面白さもあるし、彼女に一方的に話しかけまくる周りの人々も良い。
障害を持つ美女ばかりが狙われる殺人事件と彼女のトラウマ克服が並行しているホラーサスペンスなので、どこで声を取り戻すのかっつーヒロインのドラマと共に、迫りくる犯人というホラー演出と何故誰が?なサスペンス演出が入り乱れていて面白い。いい意味で焦点が絞られておらず、それぞれがキレイにエンディングに向かって収束していくので、先を読んだりアレコレ考える暇なく瞬間のハラハラした叙情を存分に楽しめる。
「誰も信じるな」と言われ「俺を信じろ」と言われ、物言わぬ彼女に対して好き勝手な男たちだったり、田舎の医師の覇権争いめいた部分だったり、義母に義兄に義弟にとサラリとしつつも複雑な家庭環境だったり、映画的にオチないところで様々なものを含ませているので映画に厚みがあるしドラマとは別のところで深い余韻が残る。
たまにカッッ!!と目を見開いて話し出す寝たきりの婆さん(バリモア一家)の眼力が良すぎる。

「幻の女」の方がドラマも演出も良くできてるんだけどこちらの方が好みだった。ヒロインを応援せずにはいられない。ミスリードも楽しい。傑作!
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