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シングルマンのdojiのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
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死んでしまいたいなあと思ったことがないひとというのは、ほんとうにいるのかなと思う。なにもかもうまくいっていたとしても、ふとしたときにちょっとぐらい思ったりするのではないだろうか。そしてそれは、ああ世界は美しいなあと思う感覚と、ある意味で表裏一体のものとして存在しているのではないかと思う。

死を決意した主人公は、几帳面にその準備を整え、来るべき夜に向けての時間を過ごしていく。そんな中、なぜこんな時に限って世界はぼくに対して優しくなんかするのだろうと、ことごとく主人公は自殺の気分を邪魔されるような出来事に遭遇する。そんな姿はちょっとくすりとするくらいおかしい。そしてすばらしいのは、その度にセピア色のカラーが、まるで頬があからむかのように色を帯び始める。

悲しい結末なのかもしれないけれど、世界の素晴らしさにきっと気づいた主人公にとっては美しくも幸福な幕切れだったのではと思う。ゲイが主人公ではあるけれど、孤独を通して繋がっていく、すべてのひとの物語だと思う。
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