恋人のジム(マシュー・グード)を交通事故で失い、失意のジョージ(コリン・ファース)が自殺を決意した日に起こった予期せぬ出来事。
1962年、同性愛が今以上に認められていなかった時代、それを知られることは恐怖以外の何物でもなかった。
同性愛者は価値の転倒を恐れる異性愛者によって、差別の対象と見做されていたからだ。
だから同性愛者は相手が自分と同じ性的指向を持っているかを見極めるため、慎重に判断しなければならなかった。
本作で目がクローズアップされ、視線の動きが捉えられているのは、そういう背景があるように思う。
「目は口ほどに物を言う」や「目は心の窓」と言われるように、目には隠し切れない真実が映る。
大学教授のジョージは最後の講義でいつにも増して熱弁を振るう。
それに感化された教え子のケニー(ニコラス・ホルト)はジョージにアプローチする。
二人は言葉以上に目で語り合う。
新しい恋の予感。
世界が色づいている間に最期を迎えられるのは幸せなことなのではないだろうか。