エブリデイねむろう

ポプランのエブリデイねむろうのレビュー・感想・評価

ポプラン(2022年製作の映画)
4.5
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督・脚本によるコメディ映画。
映画実験レーベル「Cinema Lab」の一環として制作された。

漫画配信サイトを運営する社長。
事業は絶好調でかわいい漫画家の卵と甘い一夜を過ごした彼だったが、翌日、彼の"イチモツ"が消えてなくなっていることに気がつく。

ちんこに夜逃げされた男が人生のお詫び行脚をする話。

「フラットライナーズ」でも触れたが、わたしは「自分の利益のために過去を精算しにいく話」がめちゃくちゃ嫌いである。
というか、自分に不利益があるまで過去を省みようとしない人間が嫌いということである。
本作も非常によく似たテーマ性を持つ作品である。

結論を言うと、めっちゃおもしろかった。

やってることは「フラットライナーズ」とあまり変わらないのだが、この映画のうまいところは、"逃げたポプランは夢に見た思い出の場所に現れる"という設定。
つまり本作の主人公は、救われるために過去を精算するのではなく、"ポプランを追いかけた先で過去との対面を余儀なくされる"という点にある。

この世界において"ポプラン"に逃げられた人間は、否応なく過去との対面を迫られる。
しかしそれは、関わった人々を大切にしてきた人間にとっては決して苦しいことばかりではないはずである。
翻って本作における主人公は、家族や恋人、仕事のパートナーまでをも冷酷に切り捨てる人生を歩んできた結果、おそろしくしんどい思いをすることになる。
つまり彼は、自分の人生に裁かれているわけだ。

そんな深謀遠慮に富んだテーマを、ちんこで表現したのが本作である。

主人公は「ポプランの会」ってところを訪ねるんだけど、その受付のシーンとかめっちゃ笑ったよね。
「ちょっと指入りまーす」「おおう!」の連打は卑怯だよ。
あんなん笑うに決まってるじゃん。
あと、神社で「僕はクリームを塗ってるから大丈夫なんだ!」ってとこ。
この2か所は普通に声を出して笑ってしまった。

元カノとの一連のシーンも大好き。
というか、女優さんの演技が最高だった。
あれは笑う。

ちんこの穴にストロー挿すシーンは普通に痛そうで顔が歪んだ。
逃げたちんこと痛覚だけは共有してる設定もすごくおもしろい。
この映画の痛々しさは、きっと女性には理解できないものと思う。
でも、笑っちゃうんだよね、この映画は。

本人にとっては深刻な大問題なんだけど、外野から観てると滑稽で笑ってしまう。
実際、この映画において観客を笑わせようとしてくる登場人物は誰もいない。
みんなが必死になって追いかけている。
これが"夢"ならかっこいい。
でも"ちんこ"だから笑っちゃう。
そんな人生の悲哀が濃縮されたすばらしいコメディ映画と思う。

皆さんも身近な人たちとちんこは大切にしましょう。
人生、いつポプランが旅立つのかわからないのだから。

2022ー劇07