Sasada

パリのどこかで、あなたとのSasadaのレビュー・感想・評価

パリのどこかで、あなたと(2019年製作の映画)
4.3
過去のトラウマに苦しむ人々が、他者(特に恋愛)によって救われるのではなく、自らの手で自らを抱き締めることで癒やされてゆく。
いわゆる恋愛もののフランス映画とは一線を画す作品で、現代的でとても良いと思った。

自分の苦しみに向き合い、言葉を与えてあげること。心に傷がついたことを認識し、自分の手でケアすること。今作を表現するならその2点に尽きる。

「私は苦しい」と主張して良いし、幸せになる権利を誰もが必ず持っているし、何を言われようが好き勝手に生きる自由がある。
メラニーとレミーは猫は飼ってもそれで救われることはないし、遊びのセックスでは心は晴れない。自分の言葉で自分の苦しみを語れた時に人は呪いから解けるのだなーと。

だからこそ最終盤、2人はそれぞれの場面で自分の思いを伝えるのだろうし、伝えられたからこそ晴れやかな顔で手を取り合える。

“わたしは最悪”とかとも共通項を感じるし、コロナ禍で他者と簡単には繋がれないからこそ、今作で提示されるようなセラピーが私たちには必要なんじゃないかなと思う。
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