みほみほ

いつかの君にもわかることのみほみほのレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.3
🚚2023年56本目🚚(字幕)8

上映中、今にも声を出して泣きたいくらい胸が張り裂けそうな気持ちを抱えながら鑑賞していました。ジェームズ・ノートン演じる父について、具体的な背景が鮮明に描かれないからこそ、観てるこちらがより考える事が出来たと思うし、感情的になり過ぎない事で父と息子の見えない絆を感じられた。

ジェームズ・ノートンの息子を見守る眼差しを見る度に、心が苦しみでえぐられていったり、その静かな微笑みの奥に悲しみが眠っている感じでたまらなかった。マイケルの純粋で真っ直ぐな質問が胸をグサリと突く度に、父の動揺が聞こえてくるようだった。

私も両親を亡くして生きているから、その孤独や苦しみが分かるし、自分が歳を重ねてみたら残す方の親の気持ちを想像出来るようになってきたから、親と子どちらの気持ちも深く考えてしまってあまりにも苦しかったけれど、父の思いをいつかマイケルが感じられる日が必ず来るんだなと思えたから心が少しだけ浮かばれた。

マイケルのように頼れる親戚も居なくて、里親という選択肢にいきつく子が今日もどこかに居るのかなと思うと、自分の中で様々な思いがとめどなく溢れて止まらなくなった。そして里親になる側の気持ちも、自分に重ねながら思ってしまった。

里親を探す中で出逢う家族の中にも色々な目的で申請した人達がいて、自分達の理想の為のアイコンとして養子を貰おうとするような方々がいる事もショックだったし、経済力は武器だけどそれだけで推し量る事は到底無理な話なのだと実感。

本作は一見悲しみの強い作品かもしれないけど、その裏にある 父と息子の深い結びつきを感じられたのが温かかったし、パパが好きで仕方ないマイケルが少しずつ飲み込んでいくようにも感じられる表情をしていたりして、悲しみだけでなく愛の部分が大きく残った。

人は死ぬことで逢えなくなってしまうし、人によってあまりに早かったり不平等なものでもあるけど、2人の絆が必ずどんな形でも残り続けていくように思えたから、不思議と前向きな気持ちを感じられて素敵だった。余韻が抜けない。

マイケルを演じた子役の子、表情が凄く良くて時折その、何かを確信したような力強い目線にハッとしてしまった。最近の映画に出てきた子役の中で一番グッときました。

ジェームズ・ノートンとは最近縁があるようで、昨年Netflixで観た「闇はささやく」ではクズな夫で顔を見るのも嫌だったくらい、先日たまたま観た「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」では真面目な記者の役を熱演。本作では余命わずかな父親役で、今まで触れた作品では感じられなかった繊細な表情に驚かされて、一気に好きになってしまった。どんな役でもあの目が印象的だけど、役によって全く別人に見えるから凄い。これからも楽しみな俳優さん。


シネマカフェ試写会にて。
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