【眺めるだけで彷徨えない】
U-NEXTにて。2020年作、12分の短編アニメ。
作者・辻敬太さんの近況は知りませんが、本作は、武蔵美の学生時代に作ったものなのですね。
家を飛び出した男の子が夜の町を彷徨い、似たような女の子と出会い、二人でただ彷徨う。子供にとっては幽霊のような脅威も湧くが、この町は、決して子供には手を出さないようだ。…良くも悪くも。
キャンバス地を敢えて活かした町並みの描画は、柔らかな布団のように心を覆ってきて、素晴らしい。奥行き移動には3Dも採用しており、その滑らかな立体感にも、静かにワクワクする。
但し、お話としては子供が彷徨うだけで、何かを語ることから逃げている。子供はどうやら、居づらい家から逃げているらしいが、それが家からの抑圧か、本人の我儘か、この映画からはわからない。
子供自身が自覚できないにせよ、どんな環境だろうがそこで生まれ育つことは、根本的には本人に原因があることを、作り手が腹に据えていないと説得力ある物語は生まれないと思う。
この町中は、仮想空間で自分を操作して、自ら彷徨った方が楽しそうだと思った。
<2024.3.22記>
