月下香

林檎とポラロイドの月下香のネタバレレビュー・内容・結末

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

🌙2024.06.07_24-110

記憶喪失になるという奇病が蔓延する世界。

まず私は主人公は記憶喪失になっていなかったと考察する。近所の犬の名前を覚えていたり、妻がいたと話したりしていたからだ。妻を亡くした辛さ故に記憶が無くなったふりをして全て忘れ、やり直したかったのかなと思う。

医者達が"回復プログラム"で出すタスクはあまり意味を感じられない上に趣味が悪いものばかり。
主人公がタスクをこなす中、他にもおそらく同じプログラムを遂行しているであろう人々が登場する。プログラムの内容は"自転車を乗る"という子供でも出来ることから"バーで酔ってワンナイトしろ"というものまで。初めはなぜこんな事をさせているのだろうかと思ったけど、"死にかけの老人を探し、葬儀に参列し親族と過ごせ"というタスクが出てきた時にこのタスクは人生のイベントを準えさせているのかと気づいた。
なぜこんな事をさせているのかと思ったけど、医者たちは主人公たちが"記憶喪失のふりをしている"と気づいているからなのかなと。思えば身元不明の記憶喪失者を突然1人暮らしさせたり、運転免許を持っているか分からない人の運転を許すのが不思議な話ではないか...?医者達が主人公宅を訪ね不在だった時に「逃げたかな?」と言うのも本当に記憶喪失だったらまず心配が勝つだろうに...
「この病気は完治せず、記憶の戻った人はいません」と説明していたし、身元不明の記憶喪失者は全員記憶を失ったふりをしているだけと知っていて、このプログラムを通し人生を1から準えさせる事で彼らが人生をやり直すきっかけを作るためのものなのではないだろうか...主人公のように途中でプログラムを辞め家に帰る人がいるように。

本当にこの病気のせいで記憶喪失になった人がいるのかは分からない。現代社会への風刺映画だったのかもしれない。
はたして主人公は記憶が戻ったのか、それとも記憶を失ってなどいなかったのか...とても考察のしがいがある面白い映画だった。
月下香

月下香