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ファン・ガールのlpのレビュー・感想・評価

ファン・ガール(2020年製作の映画)
4.3
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020よりフィリピンのアントワネット・ハダオネ監督の新作『ファン・ガール』!
昨年の東京国際映画祭で上映された過去作:『リリア・カンタペイ、神出鬼没』が、年間ベスト級の面白さだったアントワネット・ハダオネ監督。「リリア~」の方はモキュメンタリーだったけれど、今回は劇映画。「あぁもう、これは面白そうだ」ということで、期待して鑑賞!
そしてこれが期待通りの快作だった!

16歳の女子学生が主人公。ある日、彼女は大ファンであるスター俳優が登壇するイベントに参加するのだけれど、その帰りに俳優が運転するトラックの荷台に忍び込んでしまう・・・というのが話の導入部。
前半はこの奇抜な設定を活かして、好奇心から憧れの俳優の生活を垣間見る少女の「ファン心理」に焦点を当てて、ユニークな物語を展開する。時折ユーモアも織り混ぜられており、この時点で充分に面白い。

後半からは映画の様相が少し変わる。相変わらず少女とスター俳優の物語ではあるのだけれど、「憧れの俳優に迫る喜び」ではなく、「妄想で抱いていた理想像と、現実の姿とのギャップ」に焦点を当てる。少女の中でスター俳優の虚像が崩れ、スター俳優の実像に対して折り合い付けことが、現実の辛い家庭環境に折り合いを付けることへとリンクする。
「人気俳優の表と裏」を巡る奇抜な設定の物語が、やがて少女が背景に抱える家庭事情にも枝葉を伸ばし、「現実受容」の成長譚へと昇華する。この展開は見事だ。アントワネット・ハダオネ監督、今回も巧い!

ちなみに余談ですが、今作で描かれるスター俳優の「パウロ・アヴェリーノ」は、同名のフィリピンの人気俳優が演じているとのことで、今作が本国のフィリピンで公開された際には、そういったメタ的な面白味も付加されるのだろうなと。(フィリピンの芸能界事情を全く知らない私には、蚊帳の外の話でしたが。)

アントワネット・ハダオネ監督は今後も大注目の存在だと改めて感じる傑作でした。これは日本公開を期待したい。オススメ!
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