これは強烈。
田舎町で、半身麻痺の母親の介護をして暮らす篠原ゆき子が主人公。
母親には疫病神と呼ばれ、男には騙され、仕事もうまくいかない。
厳しい生活の中楽しみにしているのが、養蜂家として暮らす幼馴染の倉科カナを手伝うことだが、彼女はある日突然、自ら命を絶ってしまう。
唯一の心の拠り所を無くした主人公は、喪失感に苛まれ精神のバランスを失ってゆく。
本作が秀逸なのは、今の苦しさは突然生じた訳ではないということをきちんと描いていること。
主人公も倉科カナも、長年に渡って蓄積された生き辛さによって、少しずつ壊れていく。
軸となる二人の関係は、介護ヘルパーのサヘル・ローズ、倉科カナの妹役の筒井茄奈子、そして高畑淳子が演じる母親を巻き込み、やがて女たちによる共感の物語に着地する。
しかしこれ、出てきた瞬間からやらかす予感しかしない窪塚俊介以外、男たちの存在感がほぼゼロ。
この極端な“女たちの世界”の偽作的作り込みが、逆に作者にの男目線を感じさせるように思う。
もうちょっとナチュラルな男キャラがいても良かったのでは。
何にせよ観応ある力作である。
