さくらんぼ

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-のさくらんぼのレビュー・感想・評価

3.9
アメリカの貧困地域に生まれながら、イェール大学の大学院を卒業した主人公の回顧録を映画化。

書籍はトランプ支持層を理解するきっかけになると話題になりアメリカでベストセラーになったそうです。

タイトルの「ヒルビリー」とは元々「山に住む白人」だったのが田舎者を意味するようになり、アメリカの富や文化的な生活から切り離された存在を表す象徴的な言葉となったようです。

「主人公は工業の町で暮らし、
看護師をしている母は結婚離婚を繰り返し、薬物に依存している。
子供に執着し、思い通りにいかなければ暴力を振るう母を振り切り、過去を見つめ自分の人生を歩んでいく物語」

こう言葉にしてしまうと正直、映画で時々見るアメリカの一コマのように思ってしまいます。

でも、母を演じたエイミー・アダムスと祖母を演じたグレン・クロースがこの物語に深みをもたらします。

特にグレン・クロース。
『天才作家の妻』での品がある女性が強烈に残っているので、本作で初めて見た時
グレン…クロース???と思うほど、真逆の田舎のおばあちゃんを演じています。
全くの別人です。(最後に映る本人とそっくりです。)母の奇異な行動に悩まされて道を踏み外しそうになる主人公を愛をもって豪快に連れ戻そうとします。
それは力づくで乱暴にも見えるけど、
主人公の後の「もっとおばあちゃんを自慢すればよかった」という言葉を聞いて間違いではなかったんだと分かります。

今年こそオスカー受賞あるんじゃないかと思わせてくれるほどの演技でした。

「母も苦しい人生を送ってきたことを理解してあげて」と姉(ヘイリーベネット)は言います。母を見捨てず寄り添ってあげる子供達はすごいと思います。私なら逃げてしまいたい。親から子へ繰り返される過ちもあれば、反面教師として道を切り開く人生もある。

映画だけでは理解できなかったアメリカの背景や実情が本には書かれているはずなので読んでみたいと思います。
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