このレビューはネタバレを含みます
音が生み出す物語、音の裏切りに傷付きながらも気持ちに蓋をして夫婦関係を続ける家福、車内で流れるテープの台詞、高槻の存在、車内や静かな場所でのみさきとの会話…
ゆっくりと、どこか不思議な空気を感じながら、でもしっかりと点と点が繋がるような物語だった。
台詞練習のテープから流れる音の声に対して返す家福の台詞は、彼自身の気持ちを代弁するようで、終盤の舞台の中でワーニャへ語りかけるあの台詞は、家福やみさきへ語りかけるような言葉そのものでぐっときた…。またワーニャを演じられて良かった。
“生きていきましょう。長い長い日々を長い夜を生き抜きましょう。”
“そしてあの世で申し上げるの、私達は苦しみましたって、涙を流しましたって、つらかったって。”
喪失を抱えながらも、目を背けたくても、自分の心の折り合いをつけて、生きていかなければいけないんだ。