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クラッシュ 4K無修正版のんぎのレビュー・感想・評価

クラッシュ 4K無修正版(1996年製作の映画)
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冒頭におけるジェームズとヘレンの邂逅、正面衝突したそれぞれの車のバッキバキなフロントガラス越しに双方の視線をカットバックで交錯させる流麗な手さばき。後部座席のカーセックスを運転席のジェームズの横顔からパンして捉える、そのショットの始点と終点を変えぬまま3回も4回もループさせて時間の経過(とオーガズム)を演出するヤバさ。カメラポジションも構図も美術も周到に計算されたかのような美しいショットが矢継ぎ早につながれるので、クローネンバーグのフィルモグラフィにおいても突出した傑作だと確信するまでにそう時間はかからなかった。シーンとシーンをつなぐ手段としてカーチェイスがあるのではなく、カーチェイスそれ自体が唯一無二のシーンとして立ち上がり、映画を鮮やかに駆動させていた。エロスとタナトスが渾然一体となった極限の欲望が無軌道にぶつかりあうなかで、無機的なエンジンと有機的な演者たちの息づかいが今なお耳に残り続けている。
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