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スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.9
【虚構の中の現実】

不定期開催「第1回dm的映画祭2021」のラストを飾るのはこの作品でした。
さすがに1日4本、しかも劇場移動込みなので、ここまで来るとさすがに疲れる(笑)。
サツゲキの待合ロビーでチョコレート食べながらマッタリしていたらウトウトしてしまった・・・。
気がついたら上映開始の2分前!
(危っぶね~~~)
内心バクバクしながらも、至って平静を装ってスクリーンへ向かう。

平日の16時。
やっぱり劇場は空いている。
サツゲキで一番大きなスクリーンでの上映にもかかわらず、結局入ったのは僕も入れて2人だけ。
さすがにちょっと寂しいね。

この作品は実在する女性スタントマン、いわゆる「スタントウーマン」たちが歩んできた歴史について、彼女たちの証言を基に構成されたドキュンメンタリーとなっている。

見た目の派手さは正直皆無に等しいくらい無いです。
ところどころにスタントシーンは出てきますが、それはあくまでも彼女たちの証言を裏付けるために流れる「背景」的な役目です。
なので、タイトルのイメージそのままに「激しい映像」を期待してしまうと肩透かしになる可能性があります。
ただ、それはこの作品の評価とは直接関係無いかもしれません。
この作品を通して彼女たちが伝えたかったことは、決してあの華やかな舞台に立つことだけではなかったから。
実際、僕自身も今作には「目が覚めるくらいの激しい映像」みたいのも期待していました。
ジャケットなんかもちょっとそんな雰囲気あるでしょ?

・・・でも、彼女たちの話を聞いていくうちに、映画における女優との関係性や、決して恵まれているとはいえない現状、そして未来というものへの熱い思いがビシビシと伝わってきます。
それは、もしかしたら「映像」では伝えきれないものだったのかもしれないなって。


以前、「ローグワン(SWのスピンオフ作品)」を観たとき、エンドロール直前の「とある人物」が登場した瞬間に「おぉ!」と思わず声を出してしまった。
物語の展開上、その人が出てきてからのEpi4という流れも完璧でしたが、それ以上にCGによって完璧に造形されたその人は紛れも無く「本人」そのものでした。
正直「アバター」なんかでもCGの表現力が絶賛されていましたが、僕にとっては、この瞬間の方が衝撃度で言えば上でした。

(もう実際の人間が演じなくてもよくなってしまうんだな・・・)

映画とは、たとえ題材が実話だったとしても、あくまでも「虚構」の世界だと思う。
限りなく事実に基づいて作ったとしても、そこには「脚本」があって「演者」がいて「始まり(アクション)と終わり(カット)」がある。
もちろん、本人を映した「ドキュメント」という作品もあるが、いわゆる第三者の解釈が展開に影響してしまう時点で、それは「事実」として映像に残っても「真実」ではなくなってしまうこともある。

こと、物語などの創作物に関しては「誰が演じるか?」という事によって表現方法に違いがあるにせよ、結果的には「虚構」の世界という事になる。
その表現方法は、実際に役者が演じる場合もあれば、「アニメーション」かもしれないし、もしかしたらモーションキャプチャーを駆使したフルCGかもしれない。そして、その手法は映像技術の進歩とともに徐々に変化している。
それまでは「人間が演じることの出来ないような場面」を表現するためのツールとして、アニメやCGを用いることが多かったけど、いつの間にか限りなくリアルな「人間らしさ」をそれらに求めるようになっていた。
架空を描く技術が限りなく「リアル」を追求した結果、私たちは知らずの内に「リアル」と「架空」の境界線に立ってしまった。

そうなった時、一体僕たちはどちらが観たいだろうか?

そこに「スタントマン」や「スタントウーマン」の存在意義(答え)があるのかもしれない。
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