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ホムンクルスのnatsumixのレビュー・感想・評価

ホムンクルス(2021年製作の映画)
3.5
これ実写化決まった当初はNetflix独占連ドラだと思ってたんですよね。そしたらまさかの劇場先行公開するぜ!って言われたんで、すっ飛んで来ました。

原作をご存知な人は「これ実写化しても大丈夫?」て心配してたと思うしわたしもそうだったけど、いざ観たら「そもそもあのボリュームと内容の作品をよくぞここまでまとめてくれた!しかも斬新な展開で!」てなりました。

斬新な展開というのはね、これアニメ版ジョゼ虎の時も書いたけど、原作から出すエピソードと出さないエピソードの取捨選択が、2021年という時代を考えると「今やるならこうなりますよね」ってなる、個人的には配慮されているなと思えた改変と展開だったという意味で、これはこれで良きでした。なので原作未履修でいきなり観ても全然大丈夫です。

だってこの作品に限らず、今は当時の原作をまんまやってたらざわつかれてしまう作品も多々あるもんね。最近はそういう改変を施したリメイク作品や新解釈作品も増えて来て、勿論それが寂しい時もあるけど、観る側のアップデートも求められる時代なんだな、とも思ってて。だったらどっちも楽しんだ方勝ちだし、わたしはどっちも楽しみたい。

とはいえわたし普段から散々「ホラーは苦手です」て公言してるのに急にどうした?監督の得意分野はガチホラーだよ?てなったものの、清水崇監督といえば「怪奇大家族」「SOIL」の人でもあるし(高橋一生主演作品なのでこれもがんばった)、なんたって花束クラスタがニヤニヤしちゃう実写版魔女宅の人でもあるから相当がんばりました。ところで実写版魔女宅ってホラーなの?(違うよ!)

なので当然観てる間も観た後もしばらく胃のあたりがみぞみぞしてたけど、何故そこまでして観るのかと問われたら「トラウマレベルだったあの作品の実写版を綾野剛の名越と成田凌の伊藤でやるなら観たい、という強い気持ち(強い愛)に抗えんかったから」という理由です。

綾野剛先輩は顔面筋肉の緻密さが相変わらず天才で、あれはCGではなくガチでやっているんだと思うと本当に震えたし、記憶喪失だった名越が段々人間を取り戻してゆく様、記憶を失くしたその理由を知った後の新しい人生の進め方、これが綾野剛先輩ならではの虚無や怯えや怒りや慈愛や希望を全て表情で語ってゆく姿がとても鮮やかだった。

そして成田凌くんの伊藤!みんな大好きサイコパス成田凌が観られるよー!(言い方)得体の知れない不気味さを醸し出すお芝居、怖すぎて泣きそうになった。あと実写版の伊藤のビジュアルはウィッグのバリエーションも沢山あってアクセサリーやメイク、そしてその武装というデコレーションが剥がれた時の伊藤の本当の姿とのギャップがもうね…。

そんな名越と伊藤の対峙シーン!もう神がかってましたね。

あらゆるものに対する愛を常に持つ綾野剛先輩の名越だからこそ出せる聖母的な空気感と、ことある事に守護欲を掻き立てる成田凌くんだからこそ出せる伊藤の心の闇がめちゃくちゃ溢れていて、観ていて情緒をかき乱されてしまったよ…。

そして後半のあの伊藤…まさか伊藤がそのくだりをするの…伊藤、あれからどうなったんや…(母の気持ち)てなるっていうね、そういう意味でも斬新。

あとこの作品の実写化告知が「映画キャラクター」のキャスト発表前だったから、最初はこっちのキャストが小栗旬×菅田将暉なのではって勝手に予想してたんだけど、よくよく考えると、もしこれが小栗名越だったらちょっと威厳が出過ぎちゃったかもしれなくて。なのでこのキャスティングは大正解です。

あとは岸井ゆきのたんのななこ(ななみ)ですね。ななこ(ななみ)編は大幅に設定や結末が改変されてたけど、むしろこの展開はありだと思った。あと「愛がなんだ」を通ってる身としては、成田凌くんと岸井ゆきのたんの関係性が真反対なのが本当に感慨深かったので、また共演してください。

内野聖陽さんの組長も良かったなー。ホムンクルスは描写のグロさがクローズアップされがちだけど、元は人間の深層心理に迫る作品だから、そういう心の機微を余程きちんと表現出来る役者さんでなければならないのよね、そういう意味でも内野さんはピッタリだった。

という訳で現在劇場では劇場限定映像と先着クリアファイル特典ありで公開中です。やっぱりカルト的人気作品だけあってお席はぎゅうぎゅうだったので感染対策万全で是非に。爆音ミレパも浴びられるよ。
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