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CUBE 一度入ったら、最後のnatsumixのレビュー・感想・評価

CUBE 一度入ったら、最後(2021年製作の映画)
4.0
これは昔観たカナダの映画のリメイクではない。
繰り返す、これはリメイクではない。

極限状態に置かれた6人のメンバーが、それぞれの過去や現在と向き合う中で本当の自分が明らかになってゆき、その発言ひとつ行動ひとつで自分や他人の運命はルービックキューブのように変わってしまう、または変えることができる、という様を役者の鮮やかなお芝居で魅せる密室劇です(要するにリメイクでは?)

待って、聞いて!これ関係者、特に公式宣伝部がエゴサする事も承知の上で書くけど、本来どの宣伝部でも掲げているであろう「その作品をより多くの観客に映画館で観てもらう」という最大の目的意識があまりにも抜け落ちている気がしていてね…

ここのレビュー達を見てしょんぼりしちゃったから勝手に擁護するとだね、確かにあれだけ公認リメイクでーす!てバチボコにアピールされたらそりゃみんなオリジナル版と比較しちゃうよね、そして全然違えー!ってなるよね、わかります、わたしも初見はひっくり返りました。

そもそも見どころの伝え方が違うんよ。

だったらこの作品は元々ハリウッドチームで制作予定だったこと、だからこそのこの役者陣だったこと、コロナ禍で日本だけでの制作になってしまったこと、それでもあえて今この作品をリメイクした意図、本編にも「今この作品を観る事の良さ」が確実にあったから、そういうお話をしてくれた方がこの作品を観たくなるんじゃないかなと思ったのよね。

「血は出るけど全年齢対象だから安心してください、鬼滅よりレーティング低いです!だからスリラー作品NGな人でも『思ったより大丈夫だった!』てなると思うのよ、だって鬼滅の方が全然怖いし。結論、鬼よりも怖いのは人間!」ってまずそれを伝えるだけでもだいぶハードル下がるでしょ(?)

舞台や設定がシンプルな分、人間の機微を描いたらピカイチの徳尾浩司脚本と、絶妙なタイミングで舞台に色を添えるやまだ豊劇伴と、数々の映像作品で名を馳せた清水康彦監督が、超わかりやすい仕掛けとオチを作ってくれてるから、オリジナル版を観てない人でも無問題。

役者陣もそれぞれのキャラを本当に丁寧に演じているのよ。緊迫感と恐怖、後悔と自責の念、鬱屈した思い、秘められた優しさ、自問自答する罪と罰、生への執着、これからの未来、と、今沢山の人が感じているであろう様々なもやもやを全部代弁してくれているかのような作品。

個人的MVPは岡田将生さんですね。「キャー!こういうおかだまちゃん観たかったのー!」ってここんとこのおかだまちゃんのお芝居は凄まじくて 「ドライブ・マイ・カー」も素晴らしかったし今作もすごい。

主演の菅田将暉さんも繊細なお芝居が本当に光っていてね…穏やかでちょっと気が弱くてでも優しくて。色んな事を抑えて抑えてそのうち諦めて、かつては上手くやり過ごそうとしてた時もあったけど、これからはもう諦めずにこの手を離さない、と誓ってからの目の色の変わりようが秀逸だった。

斎藤工先輩も乱暴で不器用だけど実は誰よりも熱く優しかったりとかさ、本性出してからの吉田鋼太郎様劇場も最高だったしさ、杏ちゃんの情緒の変化が見えた時はわたしの心も動いたしさ、あと田代輝くん!初見の時には気付けなかった細かい細かい目線のお芝居がすごい!本編にも通じるような、未来を担う若き素敵俳優が爆誕してる!て感激したよね。

そして主題歌!これ最初「みんなー!主題歌はおげんさんよー!」て言われた時「えっまじで?」て真顔になったんだけど、完成披露時点ではまだわからなかったその世界観を、配信開始されてから歌詞とMVで目の当たりにしてぶっ飛んだ。またとんでもない星野源の名曲が世に放たれてしまったよ、お母さん。

ここだけの話、映画CUBEで一番怖いのは主題歌。
だってあんなにPOPな曲調なのに歌詞が既に地獄。
なのに決して胸糞ではない。まさに地獄でなぜ悪い。

という訳で色々書いてしまったけど、これ前評判とか先入観で観るのやーめた、てなっちゃったら本当に勿体ないです。是非劇場で。
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