クリーム

名もなき歌のクリームのレビュー・感想・評価

名もなき歌(2019年製作の映画)
3.6
1988年の政情不安に揺れるペルーを舞台に、出産したばかりの赤ちゃんを奪われてしまった女性と、彼女の話を聞き、事件の背後に隠された組織的な闇に足を踏み入れる一人の記者の姿を描いたお話。実際にペルーで起こった国際的な乳児誘拐事件がベースになっているらしいです。最初からずっと希望を感じない映画でした。ひたすら暗く救いもありません。貧困故の悲しい現状を主人公のヘオと一緒にただ受け止めざるを得ない作品。観た後、暗い気持ちになりました。




ネタバレ↓





若い原住民の夫婦。ヘオ達が暮らすのは砂漠のような僻地で家もバラック。当然、国家から発行される有権者番号も所有していません。ヘオは、ラジオで流れた無料を謳う産婦人科の話に乗ってしまい、産まれたばかりの我が子を一度も抱くことなく、奪われてしまいます。警察でも裁判所でも有権者番号が無い為取り合って貰えません。
仕方なく新聞社に行って訴えると記者のペドロが事件を扱ってくれる事になります。取材をしたり調べたりはしますが、
ペドロが書いたと思われる乳児売買が組織的に行われているという新聞記事がでて終わります。
乳児売買の実態が明らかになるとかでは無い結末。明らかに乳児売買が行われていたであろう事は、容易に想像は出来るけど、スッキリ終わらせない。まあ、ペドロもゲイネタで脅されてたので、仕方ないんですけど…。赤ちゃんは戻らず、夫も過激派に入り、事態は悪化して終わる。救いのない映画。
ペドロと議員との言い合いで、「見方による」 「何も与えられない母親とどちらが幸せだ?」と言う言葉にはゾッとしました。最悪な言葉ですけど現実として、考えてしまった。そのくらい悲惨な生活でした。
この時代、政情不安の中、貧しい原住民の切羽詰まった生活、乳児売買と淡々と一部を切り取って観せられる。観る側は、事実として受け止める。凄く気の毒な話なのに心が動かなかった。何故だろう?きっと観る側の私もヘオと一緒に絶望を味わい諦めたんじゃないかと思う。
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