みんと

モーリタニアン 黒塗りの記録のみんとのレビュー・感想・評価

3.9
先ずは今作が公開出来た事に驚きだった。当然アメリカでは通らなかった企画とは言えイギリス映画としてでも…

9.11の首謀者の一人として不当拘禁されたモハメドゥ・ウルド・スラヒによる著書を原作にアメリカ政府が隠す、恐るべき真実に迫ったサスペンス・ドラマ。

スラヒを救うべく奔走する人権派弁護士役にジョディ・フォスター。ついクラリスを思い浮かべてしまうくらい適役だった。知性と言い聡明さといい冷静さと言い…

そして軍の弁護士役カンバーバッチが良かった。手記に惚れ込み映画化を熱望、当初はプロデューサーに専念する予定が完成した脚本に更に惚れ込み出演を望んだのだとか。流石!思い入れが違う。

また、なんと言ってもスラヒを演じたタハール・ラヒムが素晴らしかった。
デビュー作『預言者』で只者じゃない感が漂ってたけど、12年の時を経て演技に磨きがかかってた。ほんと、囚人役が良く似合うなぁ…(語弊があるかもだけど)
個人的には普通の役ではどこか物足りなさを感じてたくらい。

国の怖さを思い知らされる作品に度々遭遇するけれど、やはり特定の1国の話じゃない。まさに現代のアメリカ社会でもこんな不条理が起きていたなんて。

違った立場の弁護士2人と本人の記憶、3つの視点から隠された真実にたどり着く構成も演出も素晴らしかった。勿論、目を覆いたくなるシーンも含めて。
ただ、ラストで映し出される本人の映像は長年に渡るあれ程の酷い拷問シーンと一致しない。笑顔すらたたえた明るい姿からはとても想像出来ない。

許すと自由はアラビア語では同じだと言う。まさに許す事が希望と対なるものだと身をもって証明している。恨みや怒りの先に自由は望めないし決して平和は訪れないのだ。

国を相手に、しかも圧倒的に不利な状況であっても決して屈すること無く戦い続けた3人の姿に人間の強さを感じる。
とても意義深い作品だと思う。
みんと

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